piano

第5回
みの、真っ白になる

試験で弾く曲は、たまたまベートーヴェンのソナタ 作品10の1 ハ短調 第1楽章になったのですが、もともと人一倍手の小さなわたしは、激しいベートーヴェンの曲が大の苦手で、O内先生からは「もっと強くっ!!」と、耳にタコができるほど毎回注意されていました。もっともO内先生の口はすっぱくなっていたでしょうが。
そんな苦手な曲を2か月後の試験で弾かねばならぬとは(泣)。

あっという間に2か月は過ぎ、わたしは札幌の試験会場に来ていました。
早目に会場に着いたのですが、もうすでに緊張はピークを迎え、手はどんどん冷たくなる一方でじわりと汗ばんでくるので、何度もお湯で手を洗い温め、なんとか指が動くようがんばっていました。

そしてついに試験の時間に。
教室に入って軽くお辞儀をし、名前と曲名を告げて、いざグランドピアノへ。
もう手はブルブル震えている。
何とか構え、一息ついて弾き始めました。

が、わずか4小節あたりでわたしの頭は真っ白ケーになりました。人間、究極に緊張すると本当に文字どおり頭の中って真っ白になるんだぁ、ということだけが漠然と頭の中をよぎりましたね。

で、どうなったかって?
いやぁ、この曲はフォルテでガーンと弾く部分が多いんですが、それをほとんど外し、それ以外の部分は短距離ランナーのように突っ走り、もうめちゃくちゃでしたよ。ハハハハ。ヽ(´▽`)ノ
ま、幸いなことに、止まってしまってそこから弾けなくなるという最悪のパターンは免れましたがね(そうなってたら、自動車学校の卒検みたいに「はい、帰っていいよー」と言われたんだろうか…)。

その後の面接は、もうふっ切れたのか脱殻になったのか、特別緊張もせず淡々と終わりました。

── 数日後。
そろそろO内先生からお怒りの電話が来るだろうと身構えていたら、来ましたよ。

先生「ちょっとぉ〜、あんた何やったのォォ!? 落ちたわよー!!」

ふ。やっぱりな。

…と思いつつもやっぱりショックは大きく、その日1日は超ブルーでした。

これでまた細々とフリーでやっていこう、と思っていたのですが、事態は思わぬ展開へ。これはまた次回。

次回は『結局、教室講師になる』です。

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Last modified: Wed May 15 22:14:13 JST 2002